GURPS ハンター・シリーズ α版

プレイレポートその2
シナリオ名:
「転生」
筆者:ELIZA

このプレイレポートにはシナリオのネタバレはありません。安心してお読みください。

キャラクター紹介(具体的にデータを作成したハンター関係者)


ゲームマスター:ELIZA
 今回のセッションを企画した張本人であり、このプレイレポートの筆者でもあります。

ハンター8号:蜂須賀 舞
男→女
NPC

 小説の「転生」で新しく登場した「新8号」で、設定等も全く同じです。今回のセッションではNPCだったので詳しいことは省きますが、エージェントとしての能力は今回用意したキャラクターの中で最も高いのではないかと思われます。ガープスの未訳サプリメント『Martial Arts』のデータを用い、古武術の使い手としています。

ハンター17号:半田 伊奈
男→女
NPC

 小説の通りの設定で、ガープスの未訳サプリメント『Martial Arts』のデータを用いて(ELIZAが考える)極限まで戦闘能力を高めました。そのため、セッション中では洒落にならない戦闘能力が暴走してPCたちに脅威を与えました。

ハンター23号:二岡 光吉

プレイヤー:Yさん

 基本的には小説の通りの設定ですが、それだけだと他のPCたちに比べて弱すぎるので、全ての能力値を11にして小説で23号が持っている装備を一通り使いこなせるだけの技能を持たせ、49号や最源四姫を「後援者」や「情報屋グループ」として持たせました。かなり正確に小説の設定を再現したつもりだったのですが、セッションの後になって「重大な災いごとを遠ざける体質」(ルール的には「幸運/イベント遭遇に特化(−20%)」で再現する)と「ギターが趣味」(<楽器演奏/ギター>で再現する)、「突っ込みや解説をしないではいられない」(適切な「強迫観念」ないし「癖」で再現する)という重要な設定をすっかり忘れていたことに気が付きました。キャラクター提唱者のてぃーえむさん、申し訳ありません。(小説ではきわめて印象が薄いのですが)少林寺拳法の使い手で、ガープスの未訳サプリメント『Martial Arts』のデータを用いてある程度の戦闘能力を持たせました。

ハンター39号:半田 未来
性別は可変
プレイヤー:エヌさん

 基本は小説の設定を用いましたが、ゲーム時間では1秒を争う上に実時間では非常に時間がかかるガープスの戦闘では小説のように変身を使って戦うのは非常に面倒(「モジュール式能力/肉体的特徴のみ(+50%)」を用いて再現するのがベストなのですが、能力の切り替えに時間がかかりすぎます。個人の能力を種族テンプレートとみなして「変形」を用いてもよいのですが、複数のテンプレートの管理はプレイヤーにとって相当な負担になります。)だったので、讃鬼勇護をベースにしてどの形態でも同じだけの戦闘能力を使えるようにしました。(キャラクター提唱者の天爛さん、申し訳ありません。)小説独自の流派「讃鬼流」の使い手ですが、これは(剣術と蹴撃、柔道系の技を全て用いるという共通点から)ガープスの未訳サプリメント『Martial Arts』にあるクンタオのデータを代用しました。

ハンター49号:入田 利康/イルダ リンカーン
性別は可変
NPC

 小説の「転生」の時点での小説通りの設定で、23号の「後援者」でした。PCは全員250CPで作成しましたが、49号は351CPだったのでどちらかというと「仲間」として扱う方が適切だったのですが、小説の描写から「最低限の援助」しか行っていないと考えられたので、「後援者」として扱いました。

ハンター97号:影鳥 空奈

プレイヤー:Iさん

 小説の通りの設定をそのまま使っています。ただし、「時読み」はガープスの未訳サプリメント『Psionic Powers』にふさわしい特徴が見つかったため、その特徴に置き換えました。(ルール的には「PLないしGMが良いと思った任意のタイミングで」「GMの代わりにPLが判定でき(PCに判定の成否が判り)」「なぜその選択肢を選ぶとよいのかも一緒に判る」「直感」です。)戦闘では役に立たないどころか足を引っ張る設定(「血液恐怖症」や「戦闘後硬直」など)は変わっていないので、色々と「貧乏くじ」を引くことになりました。

アメリカ情報部所属対真城華代特別犬:ロッキー
オス
プレイヤー:コアラさん

 小説の通りの設定をそのまま使っています。例の演技力をどう再現したのか不思議に思われるかもしれませんが、社会的な特徴として「社会的弱者/価値ある財産」と「秘密/実は気ぐるみを着た人間である」を持たせるだけで設定はそのまま再現できます。(秘密に気付いていない人はロッキーを「動物」として扱うわけです。)アンドレやトラダス、ケイシーはそれぞれの「身元」を獲得すれば再現できるのですが、キャラクターの単純化のためにそのことは考えないことにしました。(キャラクター提唱者のBシュウさん、申し訳ありません。)小説ではそれなりの戦闘能力が示唆されているものの流派が示されていなかったので、「噛みつきを認めうる」截拳道のデータをガープスの未訳サプリメント『Martial Arts』から引っ張ってきて適用しました。(小説では「アッパーカット」と「地球投げ」(描写からするとパイルドライバーと同等の技だと考えられます。)を使っているので、ボクシングやプロレス等の流派を用いてもよかったのですが、「フォームに制限されない」精神を持つ截拳道ならば問題はないでしょう。)

内容紹介

 このセッションには4人のプレイヤーが参加してくれました。今回のセッションでは(前回の「ロールプレイ」のセッションでの反省を踏まえて)PCを私があらかじめ全員分作成していたため、参加人数は難しい問題だったのですが、セッションが成立したのはありがたいことでした。

 PCをあらかじめ全員分作成したことには確実に良い点がありました。時間配分の予測が立てやすく、よりスピーディーにセッションが行えるようになったのです。今回はプレイヤーがPCの選択と確認に費やす時間を約1時間、セッション本編を約3〜4時間と予測していたのですが、実際のセッションもその通りの時間で進みました。これはキャラクター作成だけで2時間10分もかかった前回の「ロールプレイ」のセッションから考えると長足の進歩です! また、プレイヤーがうっかりしていることによる能力の欠落の問題やGMがPCの能力を把握しきれていないという問題も減らすことができました。(残念ながら、GMのミスにより今回は完全に問題をなくすことはできませんでした。)

 前回の「ロールプレイ」のセッションから、TG描写があるとセッションの「敷居」が高くなることが解っていたので、今回のセッションではTGの要素を極限まで減らしました。そのためプレイヤーにとって世界観が若干解りにくくはなりましたが、TGを一切考えないために普通のセッションと同様にプレイをすることができました。キャラクター紹介に書いたキャラクターの主な立ち回りを(ネタばれをしない程度に)紹介すると、以下のようになります。

 ハンター8号は(NPCだったため)特に目立つことはなかったのですが、ほとんどの場面で話の中心にいました。また、盗賊系の技能が充実していたため、最終的には他のPCたちが行けないような場所に入り込んでいました。ハンターエージェントとしてあるべき理想像の1つなのかもしれません。

 ハンター17号はNPCだったのですが、他のPCたちに対して大きな衝撃を与えました。17号の「殺人嗜癖」を再現するために導入した「制御できない衝動/血を見る(自制6)」が暴走し、他のPCたちとの戦闘になったのです。17号は他のPCたち全員を相手にしても十分に戦える程の戦闘能力を発揮しましたが、最終的には気絶して10号に引き渡され、(NPCだったために)そのまま退場することになりました。

 ハンター23号はPCたちの中で最もバランスの取れた能力と装備を使いこなしていました。これは小説での描写を忠実に(ないし少し強めに)再現しただけだったのですが、23号の設定における状況対応能力の高さを立証する結果となりました。(23号を提唱されたてぃーえむさんのセンスには敬服します。)あと、「ステップワゴンの36回払いローン」を再現するために持たせた「借金」(−5CP分)はキャラクターの行動の動機づけとしてうまくはたらいていました。
 ただ、「何でも知っている」という設定を忠実に再現するため<目利き>等の技能に100CP以上のCPを「無駄遣い」したため、23号は「比較的弱い」(総合能力が低い)キャラクターになっていたのですが、これがプレイヤーにとってはストレスになったようです。「小説として楽しいこと」と「TRPGのセッションとして楽しいこと」は違うということを改めて認識させられました。23号をうまく生かすには、シナリオのパワーレベルを下げるか、「幸運/イベント遭遇に特化(−20%)」をうまく使わせるか、設定を若干無視してでも能力を上昇させる(一応、ガープスでは能力値12までは「普通の範囲内」です。)かの対策が必要になるでしょう。

 ハンター39号は(小説の能力を忠実に再現したわけではないのですが)明らかに戦闘特化のキャラクターであるということが今回はっきりしました。変身能力があるので潜入活動はできるのですが、「演技がうまくない」設定があるためにそれを生かしきれないのです。また、変身能力をどのように再現するにせよ、必要なCPが非常に多いことには変わりがないので、(23号とは逆の意味で)パワーレベルをどう調整するかがかなりの問題になるでしょう。
 その分、39号の戦闘能力はかなり高いです。キャラクター作成の次点で「乱れ月」を(ガープスの未訳サプリメント『Martial Arts』にあるコンビネーションのルールを使って)再現した時に「これは相当に強力な技だ」と判断していたのですが、実セッションではその想像以上の強さが発揮されました。(今回のセッションでの「主戦力」と判断していた)ロッキーでさえ止めることができなかった暴走中の17号を気絶させて止めたのは39号の「乱れ月」でした。(サイコロ運の問題もありますが、17号が連続攻撃を見切ることができなかったのは意外でした。)
 また、39号には「強迫観念/名刺を集める(自制6)」を持たせていたのですが、それを受けたプレイヤーは小学校のクラスメートに「名刺文化」を根付かせようと奔走していました。これは小説には出てきていない描写ですが、39号の性格に適った素晴らしい行動だと言えるでしょう。

 ハンター49号は今回のセッションでは「救援部隊」のNPCとしてしか登場しませんでした。非常に影の薄い登場と言えるでしょう。ただ、ハンター49号が必要とした医療器具と同じ装備を23号が持っていたことはプレイヤーたちを驚かせました。23号の「宝の持ち腐れ」と言えるでしょう。(これは小説の設定通りなのですが。)

 ハンター97号は今回のセッションでは最も「場違いな」キャラクターでした。キャラクター紹介を見ると判るのですが、今回のセッションでは97号以外のPCは全員ガープスの未訳サプリメント『Martial Arts』のデータを用いています。これは武術全般を扱うサプリメントで、必然的にそのデータを用いたキャラクターは武術家に、シナリオは戦闘が中心になるのですが、それが97号の「血液恐怖症」と「戦闘後硬直」とは絶対的に相性が悪いのです。そのため、97号が活躍できる場は極端に限られてしまいました。(「精神ダメージとストレス発散」のルールのテスト運用ができないかと考えたのですが、「1D分の間気絶」など、「精神ダメージとストレス発散」のルール運用ができない結果だけをピンポイントで引き当てていました。)97号のプレイヤーをしてくださったIさんには申し訳が立ちません。
 その一方で、致命的にバランスを崩すのではないかと予想していた「時読み」は意外にバランスがとれていました。(プレイヤーの皆さんからも「興味深い試み」と評価されました。)この辺は、使用したガープスの未訳サプリメント『Psionic Powers』がきちんとテストプレイを行ってバランスの確認をしたからではないかと思います。(これはあくまで推測です。)ただし、この特徴を使いこなすには「GMに」かなりの技量が要求されることも解りました。(私の技量では使いこなせませんでしたが、それがプレイヤーの不満の一因になっていました。申し訳ありません。)

 ロッキーは予想通り戦闘特化のキャラクターでした。主に「切り」ダメージを与える噛みつき(「鋭い歯」の特徴と「<空手>を噛みつき攻撃にも使えるようにする」という特典を持たせていました。)で攻撃していたため、超ダマスクス鋼製の刀を振り回していた39号と並んで戦闘を凄惨なものにしていました。
 また、持っている能力が非常にシンプルなこと、特徴が非常にネタであることはプレイヤーにはそれなりに評価されたのですが、「「秘密」がばれ(そうになら)ないと面白くない」とセッション後に批判されました。それで気が付いたのですが、ロッキーが暴走する17号を止めようとして切りつけられたとき「着ぐるみが切り裂かれた! 次のターン以降「何もしない」と宣言しなければ「着ぐるみの中」を見られる可能性がある! (実際には懸命に「傷口」を隠しているわけです。)」というメモをロッキーのプレイヤー(コアラさん)に渡すのをすっかり忘れていました。「メモにより秘密の情報を与える」というプレイスタイルは(「時読み」のために)他でも行っていたので、これは完全にGMのミスです。プレイヤーの皆さんには申し訳ないことをしました。

 肝心のセッションですが、総合的に言って「失敗」と言わざるを得ない結果でした。シナリオに若干欠陥があった(そのため、シナリオ「転生」は手直しを行うまで公開しません。)こともその一因ですが、「小説を再現することとTRPGのセッションで楽しむこととは別である」こと、「GMのELIZAが選ばせるPCの選択を誤った」こと、そして「準備不足」が失敗の主な原因です。
 しかし、「小説の内容を再現する」という点ではガープス ハンター・シリーズはほぼ完成と言えるレベルに達していると判りました。α版の改良のためのテストプレイとしては、貴重な教訓が得られたという意味で有意義なセッションだったと思います。

次回以降に向けて

  • あるプレイヤーからの感想に、「ハンターはDQNのかたまり」という一言がありました。前回の「ロールプレイ」のセッションでもハンター達は「狂人集団」と評されていたのですが、感想を残したプレイヤーは2人ともハンターシリーズのことを全く知らない人でした。セッションではハンターシリーズ(の小説)の雰囲気を再現できている(と私は考えている)ので、ハンターシリーズはファンでない人にはそのように映るものだと考えたほうがいいでしょう。
  • 「ギャグ補正」のルールは小説における様々なシリアス度を再現するのに適切であると判りましたが、場面ごとにメタ的にシリアス度の変動が判るのは興ざめであるという意見をいただきました。この辺は、「小説を再現する」ことと「TRPGを楽しむ」ことのどちらを優先させるかによってどう対応すべきかが変わってくるでしょう。
  • 「ギャグ補正」の調節により「半殺し」の状態はうまく再現できるのですが、実際のセッションではかなり凄惨な描写になります。GMは、実際に再現される状況と描写しなければならない状況の両方を考えて「ギャグ補正」を決めるべきでしょう。
  • 今回のセッションでは基本的に「ランダム命中部位」のルールを用いたのですが、このルールを用いると基本的に戦闘(の描写)がより凄惨になります。(胴体狙いの攻撃で単純にヒットポイントを削るだけだったのが、腕や脚にも命中するようになって部位が使えなくなるためです。)GMは適用するルールを吟味するべきでしょう。
  • ロール&ロール Vol.40で新しく紹介されたテクニックである【アッパーカット】を「ランダム命中部位」のルールと組み合わせて使ったときの顔面への命中率(と振り直しの面倒臭さ)は洒落になっていませんでした。(このため、23号はアッパーカットを顎に受けた上に大怪我の際の生命力判定にファンブルしてそのまま気絶しました。)GMは【アッパーカット】の導入時に気をつけるべきでしょう。
  • 実はガープス第3版と第4版とでは「ランダム命中部位」のルールが微妙に異なります。今回ガープス第4版の「ランダム命中部位」のルールを実際に使ってみて、このルールがより使いやすい形に改良されていることに気づきました。第3版からガープスを遊んでいる人は、この点に注意してください。
  • これ以上ガープス ハンター・シリーズを改良するには、遊ぶ人がTGを愛しているかどうか、小説の再現とTRPGを楽しむことのどちらを優先させるかでパターン分けをしなければならないことが今回のセッションではっきりしました。私の周囲の環境では「TGを愛しているわけではない」「TRPGを楽しむことを優先させる」人たちによるテストプレイしかできないので、ガープス ハンター・シリーズの改良のためには「TGを愛している」人や「小説の再現を優先させる」人の協力が欲しいところです。


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