GURPS ハンター・シリーズ α版サンプルシナリオ1 |
注意:ここから先は全てシナリオのネタバレになります。 |
シナリオ上の注意:NPCのハンターは全員ハンター番号で呼んでいます。彼らの性格や設定は小説で登場したものを利用しているので、問題がある場合は適宜入れ替えてください。また、ハンター番号49は必ず空席にしておいてください。 |
1:序今日は日曜日です。いつものようにPCたちがハンター組織で思い思いに過ごしていると、午後2時頃にスクランブルで出動要請が入ります。場所は市内の○×公民館で、「「男装と銅鑼」オンリーコンベンション」の会場です。 PCの内最低1人は、「男装と銅鑼」というのがTRPGというジャンルのゲームの1つであるということを知っていますが、それ以上の情報は<競技知識/TRPG>を持っていないと判りません。PCが「男装と銅鑼」について知っている人を探し始めたなら、知覚判定をさせてください。成功すれば23号が他の人とは明らかに違う驚き方をしていることが判ります。 23号に話を訊くか<競技知識/TRPG>に成功した場合、「男装と銅鑼」は昔から異性のPCを扱うのが伝統のTRPGで、そのシナリオはPCが化け物の居城に乗り込み、化け物を滅殺して宝物を根こそぎ持って帰る、というのが普通であると判ります。(つまり、化け物が出てきてもおかしくないと言うことです。) その情報を持ってハンター組織の管財課に行けば、通常は使わないような装備(武器など)を貸してもらえます。「華代探知機」は最低でも持っていくべきでしょうが、現場に早く向かうことと装備を万端に整えることのどちらを優先させるかはPCたち次第でしょう。(31号は即座に現場に向かって駆け出しています。) PCたちが出動してしばらくすると(すぐに現場に向かわないならば午後2時10分頃)、「華代探知機」に別の反応が現れます。「華代探知機」を持っていない場合、組織から「通信機」もしくは「携帯電話」に連絡が入ります。全てを持っていない、もしくは使用不可能な状態である場合、新たな反応には気づくことはできません。 ○×公民館の「華代探知機」の反応はまだ消えていません。ここで新しい反応の場所に行くか○×公民館に行くかでこの後の展開が変わります。なお、31号に着いて来た(着いて来れた)場合、31号は即座に新しい反応に向かって走り出します。この場合、着いて行くかによってこの後の展開が変わります。 |
2:破すぐに新しい反応が起こった場所に行く場合、現場に到着するのは速い移動手段(移動力10以上)を用いた場合午後2時20分頃、そうでなければ午後2時30分頃になります。5分以上出動時間が遅れた場合は、5分を超えた分だけ到着時間を遅らせてください。なお、31号にずっと着いて来れた場合は午後2時15分頃に現場に到着します。その場合はシナリオの真相が少し変わるので、「3:真相」を参考に話の流れを修正してください。 午後2時20分頃に現場に到着した場合、何かの紙を読んでいる女性に出会います。また、その手前4m位のところに何かガラクタの山のようなものがあります。PCたちが近くで見ると一発で判る(知らない人が見たらまず判りません。)のですが、これは31号の変わり果てた姿です。(ヒットポイントは0で、機能停止の状態になっています。) 女性は地面すれすれまであるスカートに、やたらと細いウエスト、大きく膨らんだ袖のある服(要はヴィクトリア朝英国のレディの外出着です。)を着ており、PCの1人(「男装と銅鑼」について知っていたPC)に気がつくと、何かの集中を始めます。 特に邪魔をしなければ、10秒後にはその女性は(「男装と銅鑼」について知っていた)PCの知り合い、入田利康(いりだ としやす)に変化します。(邪魔が入りそうな雰囲気になったら、彼女は即座に逃げ出します。)入田利康はかなりのTRPGゲーマーで、PCの「男装と銅鑼」についての知識は彼から聞いたものです。彼に話を訊くと、以下のような情報が得られます。
イルダ・リンカーン(入田利康)は素直にPCたちに受け取った名刺を渡しますが、PCたちが彼女を元に戻そうとすると能力が弾かれます。(ハンターの能力があるためです。)ハンターの能力についてPCがイルダ・リンカーンに話すと、「確かに、私(=イルダ・リンカーン)はどんなことでも試みることができますが…そういえば、さっき『永続魔法除去』の魔法が普通に使えるようになりましたから、そのせいでしょうか。…私は入田利康に自力で戻れるので、無理して戻さなくていいですよ。」という答えが返ってきます。その後で、イルダ・リンカーンは○×公民館で起こっただろうこと(TRPGプレイヤーたちが切り替えのできない変身をさせられたこと)が気になるので、PCたちに同行したいと申し出ます。(PCたちが同行を断っても、後をつけて来ます。) 31号はこのままにしておくわけにはいきません。誰かが組織まで持って帰るかこの場で修理するかしないといけないのです。この場で修理する場合、大修理(458ページ)として<電気技師/TL(8+1)^>−5(見た目に反して、ほとんどのダメージは配線の切断によるものです。)で判定を行い、成功すれば31号は復活します。ただし、「31号用の予備部品」が必要になるので普通は判定できません。イルダ・リンカーン(など)の魔法を使えば、壊れた部品を修理して使うことができますが、成功するかはかなりの賭け(修正は−8、エネルギー消費は6点)です。復活した31号は、本格的な修理の為に組織まで1人で帰っていきます。 午後2時30分頃に現場に到着した場合、31号の残骸だけが残っており、「華代探知機」の反応が少しづつ○×公民館に動いていることが判ります。知力判定に成功すれば、反応がまっすぐ○×公民館に向かっていることから、相手が空を飛んでいることが推測できます。PCが華代被害者を探す場合、知覚判定を行わせてください。相手が空を飛んでいる可能性に気がついていないならば、この判定には−5のペナルティーがかかります。成功すれば、上空を女性(=イルダ・リンカーン)がほうきに横乗りになって飛んでいるのが目に入ります。すぐに呼び止めるならば、イルダ・リンカーンは気がついてPCたちの下にやってきます。(後は午後2時20分頃に現場に到着した場合と同様です。) 午後2時30分頃以降に現場に到着した場合、31号の残骸だけが残っており、「華代探知機」の反応も現場にはありません。(イルダ・リンカーンは○×公民館に行ってしまっています。)PCたちのやることは31号の回収/修理と、残る「華代探知機」の反応元の○×公民館に向かうことくらいしかないでしょう。 |
3:真相午後2時頃に「「男装と銅鑼」オンリーコンベンション」に現れた真城華代は、コンベンションの運営の人から「ここに居る人はTRPGをしたくて集まっている」「TRPGというのは、別の自分、つまりキャラクターになって遊ぶゲームである」という話を聞き、コンベンションの参加者全員を「現在持っているキャラクターシートに書かれたキャラクター」にし、周辺を「男装と銅鑼」に描かれた風景に変え、プレイヤー以外の人たちをモンスターに変身させました。(この真城華代は「少しだけまとも」です。) 午後2時10分頃に入田利康に出会った真城華代は、彼から「研究が楽しくて忙しいからTRPGはやっていられない」「(TRPGは)キャラクターを切り替えられるから楽しい」という話を聞き、入田利康を彼の一番のお気に入りのキャラクターであるイルダ・リンカーンにしました。後の言葉も聞いているので、入田利康の「ロールプレイ」もできるようになっています。また、変身させる際に「さっきの公民館と一緒」という言葉をつぶやいています。その後、真城華代はすぐにいなくなります。 午後2時15分頃にイルダ・リンカーンの元にやってきたイセリア・「ル・ドラゴ」はイルダ・リンカーンに「ちゃんとした服」と日本語を与え、現在の文明を理解できるようにしました。(イセリア・「ル・ドラゴ」は「失われたものを取り戻す能力」をもっています。) その後、真城華代追跡中(真城華代に向かって真っすぐ走っている)の31号が突撃してきましたが、「猛スピードで突っ込んでくる何か」に対してイルダ・リンカーンが張った魔法の障壁にぶつかって機能を停止しました。なお、このときイルダ・リンカーンは自分がそう簡単に疲れない肉体になっていることに気づきます。 午後2時20分頃にイセリア・「ル・ドラゴ」と別れたイルダ・リンカーンは、手持ちのキャラクターシートを見て自分と入田利康の能力を確認し、話の前後関係から○×公民館に起こったであろう事態を把握して助けに向かいます。その際、○×公民館へはほうきに乗って(魔法で)飛んでいきます。なお、イルダ・リンカーンは31号が何なのかを全く理解していません。 |
4:急PCたちが○×公民館に行くならば、現場に到着するのは速い移動手段(移動力10以上)を用いた場合約20分後、そうでなければ約30分後になります。(これはハンター組織から向かう場合でも新しい反応が起こった場所から向かう場合でも同じです。) 2時40分頃よりも前に○×公民館に到着した場合、現場は大混乱になっています。冒険者になったプレイヤーとモンスター(の群れ)になったGMとが立ち回りを行っているのです! この戦闘をどうにかして収束させないと、被害者を元に戻すどころの話ではありません。必要ならば、適当な数の狼(434ページ)やグリフォン(436ページ)との戦闘を行ってください。彼らはヒットポイントが3分の1以下になった時点で降伏して大人しくなり、ドラゴンとの睨み合いの状態(後述)になります。 2時40分頃に○×公民館に到着した場合、現場はひとまず平穏な状態です。しかし問題が解決しているわけではなく、1匹のドラゴンとまだ戦闘可能な冒険者たち数人が睨み合っている状態です。(他の冒険者やモンスターたちは怪我をして動けなくなっています。)この状態ならば、PCがドラゴンの側に「元に戻す」ということでドラゴンは大人しくなります。(ドラゴンは、自分がいたはずの財宝の詰まった洞窟から「連れ出された」ことに怒っているのです。) なお、PCたちとイルダ・リンカーンが会っていない場合、イルダ・リンカーンはこの時間帯に○×公民館に到着し、怪我人の治療に当たります。(命を救うのが最優先と考えているのです。)ただし、イルダ・リンカーンが「男装と銅鑼」について知っていたPCを見かけた場合、彼女は入田利康になってそのPCから事情を訊こうとします。 2時40分頃以降に○×公民館に到着した場合、現場は切羽詰っています! 冒険者たちが全員戦闘不能になり、ドラゴンは傷つきながらも生き残って(残りヒットポイントは15点)いるのです! ドラゴンを説得できるチャンスは一度だけ、PCたちが現場に到着した直後にあります。ドラゴンが「恐怖」を発動させると同時に荒々しい声で「何しにきた!」と誰何するので、そこで<言いくるめ>−2の判定か「元に戻す」というキーワードを用いて説得すれば、ドラゴンは大人しくなります。さもなくば、戦闘をして相手を気絶させるしかありません。 なお、PCたちとイルダ・リンカーンが会っていない場合、イルダ・リンカーンは魔法による治療に疲れ果てて動けなくなっています。イルダ・リンカーンがPCたちと一緒に○×公民館に来た場合は、イルダ・リンカーンはPCたちに全面協力します。 どの時点にせよ、ドラゴンに戦闘を仕掛ける場合、ドラゴンは動ける冒険者たちがいる限り「恐怖」を発動させます。(冒険者たちがまだ動ける場合、これで朦朧状態(398ページ)に陥って行動不能になります。)そうでなければ、ドラゴンは行動可能なPCをなるべく多く巻き込むように炎を吐きます。(最初からドラゴンが傷ついていた場合は1回で、そうでなければ4回で「打ち止め」になります。)炎が「打ち止め」になって初めて、ドラゴンは近くのPCに肉弾戦を仕掛けます。ドラゴンの生命力は高くありませんが、「バーサーク」された場合かなりの苦戦は避けられないでしょう。 |
5:結末ドラゴンを含めたモンスターたちが全て大人しくなった(気絶した)なら、通常通り被害者を元に戻す作業に入ることができます。幸いにも元に戻ることを拒否する人は1人もいません。イルダ・リンカーンは《呪い除去》(『永続魔法除去』の魔法)をモンスターになったGMたちにかけて戻すことでPCたちに協力しますが、これには非常に時間がかかります。(《呪い除去》は修正が−11、エネルギー消費が20、準備時間が1時間です!)実際には、モンスターになったGMたちも通常のハンター能力で元に戻すことができ(ることにこのシナリオではし)ます。 被害者を全員元に戻してハンター組織に帰ればシナリオは終了です。イルダ・リンカーンはその能力を買われ、非常勤ハンターとして(入田利康としての生活の合間を縫っての仕事になるためです。)スカウトされ、ハンター番号49(イルダ・リンカーンのイニシャルの「IL」をローマ数字で読むと49になります。)とイルダ・リンカーンとしての戸籍が与えられます。PCたちには、以下の基準に従ってボーナスCP(472ページ)を与えてください。
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6:主要キャラクターイルダ・リンカーン(Ilde Lincoln)/ハンター49号 350CP5’5” 85lbs. 纏め上げたブロンドの髪に青い瞳、典型的なヴィクトリア朝後期のファッションをした妙齢の女性(《老化停止》の魔法を複数回かけたことがあるため、実年齢と肉体年齢の間にはずれがある。) 能力値 130CP体力11[10] 副能力値 30CPサイズ修正:0 有利な特徴 211CP文化適応/ヴィクトリア朝英国[0] 不利な特徴 −125CP義務感/一般市民[−10] 技能 104CPエネルギー回復(難)知力−2[1]−15 元は入田利康(いりだ としやす)という、生物系の大学院生でした。「研究が楽しくて忙しいからTRPGはやっていられない」「(TRPGは)キャラクターを切り替えられるから楽しい」という話を聞いた真城華代により、彼の一番のお気に入りの(TRPGの)持ちキャラクターにされた姿がイルダ・リンカーンです。(後の言葉も聞いているので、入田利康など、他の存在の「ロールプレイ」もできるようになっていますが、認識は完全にイルダ・リンカーンが主になっています。) 彼女には基本のハンター能力の他にも、「魔女(ウィッカ)」としての魔法があり、それで「どんなことでも」試みることができます。ただし、大それたことは「エネルギーが足りない」か「難しすぎる」ために魔法が発動しません。(器用貧乏な「何でも屋」と考えてください。)イルダ・リンカーンの「本来の」世界では、「魔女」は聖職者でもあったので宗教的な技能も持っているのですが、この世界には該当する宗教が存在しないので、技能を使うことはあまりないでしょう。ちなみに、彼女のクルーザーの扱いやダーツの腕前はプロ級です。 彼女の性格は「善人なヴィクトリア朝のレディ(ジェントルマン)」です。ただ、基本的な思考パターンが完全にヴィクトリア朝の人間なので、周囲の感覚と「ずれる」こともしばしばです。(彼女に言わせれば、化粧をしたり足首(より上)の足が見えるようなスカートを履いたり長い髪を纏めなかったりするのは、全て娼婦のすることです。) ただ、彼女には「魔女狩り」を受けた記憶(キャラクターの設定だったものです。)があるので、(狩る側だった)一神教の信者には絶対的な不信感を持っています。彼女は「ルールはあるから守る」と考える「人なつっこい」人なのですが、こればかりは抑えきれないところがあるようです。 それ以外にも、彼女には宝石の収集癖があります。これは「宝石が綺麗だから」ではなく、「宝石は魔法を封じておくのに都合のよい素材だから」集めているものです。そのため、彼女の宝石を勝手にいじると取り返しのつかない事態を引き起こす可能性があります。 ハンター組織では、彼女は非常勤ハンターとしてときどき勤務しています。(入田利康としての生活の合間を縫う形になるためです。)が、「何でもできる」その能力が重宝するために出動要請は比較的多く受けるようです。 ドラゴン 300CP能力値 20CP体力25[0] 副能力値 −5CPサイズ修正:+2 有利な特徴 292CP文化適応/現代日本[0] 不利な特徴 −15CPバーサーク(自制12)[−15] 技能 8CP特殊攻撃/息(易)敏捷力+2[4]−13 真城華代に変化させられた元GMです。一応言葉は通じますが、それ以外の能力は全てドラゴンのものに置き換えられてしまっています。言葉による説得がうまくいかなかった場合、大変なことになるでしょう。 |